onestonetwobirds’s diary

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アインシュタインの相対性理論 その8

アインシュタイン相対性理論について、その核心部分を紹介させていただきます。

今回が最後です。相対性理論の偉大さをお伝えしたいと思います

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

8 おわりに

 相対性理論のもっとも美しいところとして、重力は時空構造の変化であるというアイデアの意味することについて述べました。さらに、相対性理論の偉大さを示すものとして、電磁気学の結論であるマックスウェル方程式が、特殊相対性理論と矛盾しないことを示すことができます。また、太陽の重力による光線湾曲や水星の近日点移動などの僅かな量を、一般相対性理論を用いて定量的に見積ることができます。そして、最も興味を惹かれるのは、一般相対性理論の中心となる重力場方程式が、どのようにして導き出されたかです。この点は、アインシュタインに直接尋ねてみなければ、本当のことは分からないかもしれません。

 さらに、科学技術や産業分野への応用として、質量とエネルギーの等価性から生み出された原子力発電や原子爆弾光速度に近い速さで運動する原子や素粒子を制御して衝突融合させるシンクロトロン、人工衛星の時刻と地上の時刻を合わせるために用いられる相対論的時間補正法などがあります。

 相対性理論は、多くのパラダイムシフトを起こした画期的な学説にもかかわらず、その成果が従来の理論とわずかしか違わないために、「大山鳴動して鼠一匹」と謗られることがあります。そうなる理由は、地上で経験できることが、非常に弱い重力場と光速に比べて非常に小さい速度に限られているからです。翻って宇宙に目を向けると、恒星の爆発や連星をなしている二つの恒星の衝突など、非常に強い重力場が存在するとともに、その周辺に集まった粒子の光速度に近い運動が発生しています。そこでは相対性理論が本領を発揮します。

 相対性理論が世に出る前は、宇宙のことは天体観測によって理解するしかありませんでしたが、相対性理論で編み出された重力場方程式を用いることにより、宇宙の構造や時間的発展を定量的に予測することが可能になりました。これにより、ブラックホールや宇宙膨張説やビッグバン理論といった考えが提唱され、宇宙論という新しい分野が誕生しました。最近では、地球全体を受信機とみなすような観測システムが存在し、ブラックホールを可視化したり、アインシュタインが予言した重力波の伝播を実測するような成果が得られています。相対性理論は、これからも人類の知恵の基盤となり続けるでしょう。

 50億年ほど先の遠い将来、太陽は寿命が尽きて赤色巨星になると予想されています。その時、太陽系にある惑星はすべて太陽に呑み込まれてしまうと考えられます。地球が消滅する前に、人類は新たな天体への移住を果たしているでしょうか。もしそうなら、相対性理論を活用して宇宙の様子を正しく理解し、希望する目的地にたどり着いていることになるでしょう。

2022年2月

<完>

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アインシュタインの相対性理論 その7

アインシュタイン相対性理論について、その核心部分を紹介させていただきます。

今回は、重力場で光が曲がる理由を示します

連載も残り2回となりました。よろしくお願いいたします。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

7 重力場で光は曲がる

 一般相対性理論の帰結として、「重力場で光は曲がる」という現象が予言されます。実は、この現象は、相対性理論を考慮せずとも次の思考実験から示されます。地上から高いところに吊るされたエレベータのひもを切断します。それと同時に光がエレベータの中に真横から入射します。そのあと、自由落下するエレベータの中を伝播する光を地上から観測しますと、その軌跡は放物線となります。なぜなら、エレベータ内の局所的慣性系で光が水平方向に等速直線運動をするのと、エレベータが重力の加速度で落下することに伴う鉛直方向の等加速度運動が合成された様子が観測されるからです【解説7】。この現象は、重力の加速度が光の速度を変化させることを意味していますので、重力場で光は直進しないことになります。したがって、特殊相対性理論の基礎となった光速度不変の原理は、重力場では成り立たないことになります。これが、一般相対性理論が生まれることになった理由の一つです。

 光が重力場で曲がる現象は、一般相対性理論を用いると次のように説明されます。まず、重力場において重力以外の力を受けない粒子を自由粒子といいますが、光は質量ゼロの粒子ですので、ニュートン理論における重力を受けることはありません。しかし、他の力も何も受けませんので、重力場において自由粒子として振る舞います。次に、重力場における自由粒子の運動は、その場のなすがままの運動となります。それは、その場において、最も安定な動き、消費エネルギーが最小となるような動き、すなわち、最小作用の原理から導かれる「2点間の最短距離をとるような運動」です。

 一方、2点間の最短距離を与える経路は、リーマン幾何学では測地線と呼ばれる曲線です。この曲線は、あるリーマン空間においてその空間構造を保ったまま2点間の距離が最短となる条件を満たす曲線であり、 測地線方程式の解として一つに限られるものです。

 ところで、先に示した通り、重力場リーマン空間です。したがって、重力場における2点間の最短ルートは、リーマン空間における2点間の最短ルートであって、それは測地線と呼ばれる曲線となります。簡単に言うと、光は重力場の時空構造で決まる一つの曲線に沿って運動します。その結果として、軌跡が曲がるのです【解説8】。

 この予言は、相対性理論が完成した3年後の1919年に、エディントンらによって行われた日食の観測で、太陽の重力場を経由して地球に到達する恒星からの光が、日食の起きていない時より外側に1.75秒角ずれることを確かめることによって実証されました。これで相対性理論は、その正当性が客観的に示され、世の中に広まることになりました。

<つづく>

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アインシュタインの相対性理論 その6

アインシュタイン相対性理論について、その核心部分を紹介させていただきます。

今回は、「重力は時空の変化である」という一般相対論の結論の意味をひもときます

8回に分けて連載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

6 重力の正体

 一般相対性理論は、重力とは何かを解き明かす理論です。一方、特殊相対性理論では重力を扱うことができません。このことと、特殊相対性理論が加速系に適用できないことは、同じ原因によるものです。一般相対性理論が、重力について新たな境地を発見できたのは、その原因を初めて突き止めたからです。その原因は、「等価原理」と呼ばれる考えによって示されます。等価原理は、簡単に言うと、「重力場は加速系に等しい」というものです。詳しく言うと、重力場で自由落下している人から見ると、周りのすべての物は、重力の加速度と反対方向に、同じ大きさの加速度で飛び去っているように見えます。これは、自由落下している人が静止していて、周りの物が、重力の加速度とは反対方向に、同じ大きさの加速度で引っ張られているのに等しいと考えられます。したがって、「重力場と加速系は同じ現象である」と結論付けることができます。

 この考えが提唱される前から、重力について経験的によく知られていることがありました。それは、自由落下するエレベータの中では、重力と等しい大きさで反対方向の慣性力が発生し、それによって無重力状態が出現すること。重力質量が慣性質量に等しいこと。さらに、重力場は、その作用が及ぶ範囲にあるすべての物に同一の加速度を与えるということです。これらの経験的事実を、自然界における真理として原理化したものが、等価原理なのです。アインシュタインは、この原理が重力だけでなく、自然現象すべてに適用されると考えたのです【解説5】。これまでの記述により、次の二つの事実が明確になりました。

     ① 回転円盤で示された通り、「加速系では時空が変化している」

     ② 等価原理で示された通り、「重力場と加速系は等しい」

 これら二つを組み合わせることで、「重力場では時空が変化している」と推論されます。この推論を逆にたどると、「時空の変化によって重力場が現れる」ことになります【解説6】。これが、相対性理論によって明らかになった重力の正体です。そして、この正体を見抜いたことが、あらゆる物理学理論の中でもっとも美しいところとなるのです。以上で、最初に掲げた本稿の目的は達成されました。

 次に、相対性理論の成果を示すものとして、アインシュタインの重力理論を用いないと説明できない現象の一つを取り上げます。

<つづく>

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アインシュタインの相対性理論 その5

アインシュタイン相対性理論について、その核心部分を紹介させていただきます。

今回は、一般相対論により明確になった現実世界の時空構造について述べます。

8回に分けて連載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

5 時空構造の特性

 この特徴を示す端的な例として、一定速度で回転している円盤があります。その直径と円周を同じ物指を用いて測ると、円周率はπより大きくなります。なぜなら、直径方向に置かれた物指はローレンツ収縮を受けないのに、円周方向に置かれた物指はローレンツ収縮を受けるからです。そして、半径が大きい位置ほど円周方向に置かれた物指へのローレンツ収縮の効果が大きいので、円周率もそれに伴い大きくなります。つまり、回転円盤では、半径方向に空間の構造が変化しています【解説2】。また、時間の進み方も同様に、半径が大きい位置ほどローレンツ収縮の影響が大きく、それに伴い時間の進み方が遅くなります。つまり、半径方向に時間の構造も変化しています【解説3】。一定速度で回転する円盤は、中心方向に加速度が存在する系ですので、「加速系においては時空が変化する」ことを示す典型例です。

 一般相対性理論で扱う時空のもう一つの特徴は、この空間でベクトルを平行移動させた時、ユークリッド空間と異なり、移動の始めと終わりでベクトルの方向が変化することです。しかも、始点と終点が同じでも経路が異なれば、ベクトルの方向も異なってしまいます。このような時空は、曲線座標で表される曲った時空です。曲った時空とは、四次元時空における距離に相当し、世界間隔と呼ばれる量を表す式において、座標変数で構成される各項の係数が、定数ではなく座標変数の関数になるような時空です。そこでは曲率が時空構造の変化を支配しています。

 これを確かめるために球面座標を例にとります。北半球の1/4の外周を大円に沿って一周したとき、始めと終りでベクトルの向きが90度ずれます。次に、赤道面に対して対称になるように、南半球の1/4の外周を大円に沿って一周しますと、終わりのベクトルの向きは、前とは逆方向に90度ずれます。この現象は、ベクトルが移動経路によって作られる面内にある場合、平行移動ではベクトルの向きを移動経路の接線方向に一致させるという規則によって生じます。これは、リーマン空間における平行移動として幾何学的に定義さたものです【解説4】。一般相対性理論における時空の特徴として次の二つを上げました。

         ① ひとつの座標系において時間と空間が変化する。

         ② 平行移動でベクトルの方向が変化する。

 アインシュタインは、重力場もここに示された特徴を持つリーマン空間であると考えたのです。それによって、一般相対性理論を数学的に厳密な理論に体系化することができました。そして、無限に存在する一般的なリーマン空間の中から、現実的に存在しうる一つの時空を求めるために編み出されたのが、「重力場方程式」です。この方程式を解くことは、世界間隔(不変距離や線素とも呼ばれる)を表す式の係数、すなわち時空構造を求めることに相当します。

<つづく>

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アインシュタインの相対性理論 その4

アインシュタイン相対性理論について、その核心部分を紹介させていただきます。

今回は、特殊相対論によって生じた時間と空間の概念の変化について述べます。

8回に分けて連載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

4 時間と空間

 相対性理論が知られる前においても、空間は、ある意味で相対的なものと認識されていました。それは、静止系と運動系があった場合、運動系にいる人から見ると、自分が静止していて静止系が自分とは逆方向に同じ運動をしているように見えるからです。一方、時間は、完全に絶対的なものと認識されていました。したがって、相対性理論によるイノベーションの影響がより大きかったのは、時間の概念に対してです。

 光速度不変の原理から、「同時刻の相対性」という事実が導かれます。これは、静止している観測者にとって同時刻に起きる二つの事件が、一定速度で運動している別の観測者にとっては異なる時刻に起きることを意味します。実例として、定速で走っている電車の中央から発された光が、等距離にある電車の両端に到着する時刻は、電車の中にいる人から見ると同じですが、電車の外にいる人から見ると、前端に到着する時刻が後端に到着する時刻より後になります【解説1】。これまで時間というものは運動状態にかかわらず全ての人に共通であると信じられていましたが、この事実によりそれは真実ではないことがわかりました。同時刻の相対性は、「時間の相対性」と言い換えられます。すなわち、運動状態の異なる慣性系間で時間の進み方が違います。運動速度が速くなるにつれて時間の進み方が遅くなります。「走っている時計は遅れる」という現象が現れます。これはローレンツ収縮と呼ばれています。このような現象が起きる理由は、静止系と運動系で時空構造が異なっているからです。静止系と運動系の時空構造にはローレンツ変換と呼ばれる関係があることがわかっています。

 時間が相対的であるのと同様に、空間もまた相対的です。すなわち、「走っている物体は縮む」という現象が確認されています。それまで、物体は静止している時と運動している時で、その形は同じと考えられていましたが、相対論的には、運動している時の形は運動方向に縮みます。その理由も、時間の場合と同じく、異なる慣性系間にローレンツ変換という時空構造の関係が存在することによります。この関係から、時間と空間は互いに影響し合い独立ではなくなります。その結果、時間と空間は一体化され、四次元時空として扱われることになりました。これに伴い、速度、加速度、運動量とエネルギー、電磁場、電流などの物理量は、四次元の量として扱われることになりました。

 時間と空間が一体化されて四次元時空として扱われることは、一般相対性理論においても引き継がれています。したがって、いろいろな物理量を四次元量として扱うことも同様です。特殊相対性理論では、異なる慣性系間で時空構造が相対的でしたが、一般相対性理論では、一つの加速系において時空構造が相対的になります。ひとつの座標系の中で、場所によって時間の進み方や空間の尺度が変化するのです。

<つづく>

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アインシュタインの相対性理論 その3

アインシュタイン相対性理論について、その核心部分を紹介させていただきます。

今回は、特殊相対論誕生の起点となった実験と、一般相対論が必要となった理由を示します。

8回に分けて連載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

3 相対論の起源

 相対性理論が成立するための起点となったのは、1887年にマイケルソンとモーリーが行った実験です。当時は、宇宙のどこかに絶対的に静止している場所があり、物理法則に現れる光の速度は、その絶対静止系に対するものと考えられていました。そこで二人は、絶対静止系に対する地球の速度を測定しようと試みました。その結果、地球の進行方向に対して同じ方向と直角方向の光の伝播速度が等しいことになりました。これは、両方向の速度がゼロであることを示しています。つまり、地球は絶対静止系に対して静止しているという天動説に逆戻りしてしまいました。この不合理は、光の速度と地球の速度の合成が、それらのベクトル和であるという考えを採用したことが原因です。相対性理論が生まれる前は、この考え方が常識でありましたので、上の実験結果は素直に受け入れられませんでした。

 しかし、それとは反対に、アインシュタインは、この実験結果を自然が教えてくれた真実であると考え、「光の速度は、あらゆる慣性系において同じ値をとる」という立場をとりました。この考えは「光速度不変の原理」と呼ばれ、特殊相対性理論の基礎原理となっています。そして、もう一つの原理「あらゆる慣性系において、物理法則は等しくなるべきである」という特殊相対性原理と併せた二つの原理に基づき、時空に対する認識を修正し、それに矛盾しないように物理学の体系を再構築したのが特殊相対性理論です。ただし、その適用範囲は慣性系に限定されています。特殊相対性理論の特徴的なこととして、光の速度を超える速度は存在しないことや、時間と空間にローレンツ収縮という奇妙な現象が起きることがわかっています。これらの現象は、光速度不変の原理に起因するものです。

 特殊相対性理論の適用範囲が慣性系に限られ、加速系に適用できないという点は、理論の不完全性と思われます。そもそも、自然現象は座標系という人為的な選択に影響されないはずです。しかも、自然界に必ず存在する重力の影響下では、慣性系と加速系は区別できません。なぜなら、重力場に置かれた慣性系と無重力場に置かれた加速系で、必ず同じ現象が観測されるからです。

 特殊相対性理論のもう一つの問題は、電磁場についてはマックスウェルの理論と矛盾なく成り立っているものの、重力場についてはこれを扱うことができない点です。特殊相対性理論が抱えるこれらの問題を解決するために、アインシュタインは、一般相対性原理「加速系を含むあらゆる座標系で自然法則は等しくなるべきである」と、等価原理重力場と加速系は等価である」を根拠に、数学的手法として、リーマン幾何学を用いることによって、時空や重力に関する新しい理論体系を構築しました。これが一般相対性理論です。

<つづく>

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アインシュタインの相対性理論 その2

アインシュタイン相対性理論について、多くの方に知っていただきたいことがあります。

今回は、相対論によってもたらされた時間・空間と重力に対する認識の転換を紹介させていただきます。

8回に分けて連載させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

相対性理論のもっとも美しいところ

2 パラダイムシフト

 相対性理論は世の中にいろいろな変革をもたらしました。その中で最大のものは、時間と空間のあつかいに本質的な修正がなされたことです。相対性理論が現れる前は、時間は過去から未来に向かって常に一定の調子で流れ、万人に対して同じ時刻を示す絶対的なものでした。また、空間は三次元方向に一様に広がったもので、ユークリッド幾何学で扱われる空間と同じものでした。そして当然のこととして、時間と空間は互いに別物として扱われていました。

 ところが、1905年に特殊相対性理論が確立されると、時間は運動することによって遅れが発生し、空間もまた運動によって縮みが生じることがわかりました。つまり、時間と空間は運動状態によって変化する相対的なものとなりました。あわせて、時間と空間にはローレンツ変換と呼ばれる一定の関係があることが示されました。

 さらに、1916年に一般相対性理論が確立されると、特殊相対性理論でも疑われることのなかった時空の一様性が見直され、時間と空間は非一様なものとなりました。それは、一つの座標系においてさえ、場所によって時間の進む速さが異なるとともに、距離の単位が変化することを意味します。このように時間と空間の概念は常識とかけ離れたものとなりました。これまで時空構造は直線で表されると考えられていたことが通用しなくなり、新たに曲線を主体とする時空を考えることが必要となりました。

 相対性理論によってもたらされた変革で次に大きなものは、重力に対する認識が刷新されたことです。相対性理論が現れる前はニュートンの理論に従い、重力は二つの物体の間に働く万有引力であると考えられていました。私たちが地上で経験する重力も、地球と地表にある物体の間に働く万有引力に他なりません。その力の大きさは万有引力の法則に従い、二つの物体の質量とそれらの間の距離から定量的に求まるものでした。しかし、相対性理論光速度を超える速度を許していないのに対して、ニュートンの理論は無限大の速さで重力の作用が伝播することを前提としています。重力の伝播速度に関するこの不完全さによって、ニュートンの重力理論には誤差が生じてしまいます。一般相対性理論によると、重力は時空の変化であるということになりました。

<つづく>

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